【おすすめ書籍】これからの働き方を考える【働き方4.0と5.0】
働き方に関する本を読みました。
これは自分の子供たちが成長したときに、どのような社会で働くのかということを考えるのに参考となる本だと思います。
働き方2.0vs4.0 橘玲著 (PHP研究所)初版2019.4.3
働き方5.0 落合陽一著 (小学館新書)初版2020.6.8
働き方5.0のほうは2016年4月に発行された「これからの世界を作る仲間たちへ」をべースとしてコロナ後の世界の働き方はどうなるかということを加筆・再編集して新書版にしたものです。
二人とも単純労働(バックオフィス=事務作業)は機械に置き換えられていき、人間はクリエイティブクラス(創造的な仕事をする人)を目指せという大筋で同じ結論となっています。
マックジョブと呼ばれる仕事はAIを導入するコストよりも人間にやらせたほうが安い場合があるので残るというのは意外でした。
人間に最適なインターフェイスは人間なので、誰にでもできる仕事だからと言って消えるとは限らないというのも面白い話です。
後発の「働き方5.0」はかなり「働き方2.0vs4.0」を意識した構成になっています。
・「働き方2.0vs4.0」橘玲 著
橘氏は
働き方1.0 年功序列・終身雇用の日本的雇用慣行
働き方2.0 成果主義に基づいたグローバルスタンダード 【←いまの日本はここを目指している】
働き方3.0 プロジェクト単位でスペシャリストが離合集散するシリコンバレー型
働き方4.0 フリーエージェント化(ギグエコノミー)
働き方5.0 機械がすべての仕事を行うユートピア/ディストピア
と定義しています。
現在の世界での働き方・雇用形態・解雇について様々な例を挙げて日本との比較を行っています。
また、日本の雇用には様々な差別問題を含んでいるとして問題提起しています。
正社員:非正規=同一労働同一賃金問題(身分問題:正社員の既得権)
高卒男性:大卒女性=性差別
現地採用:本社採用=国籍差別
定年再雇用=年齢差別
世の中がどんどん「リベラル」になっていく中で、日本もその流れには逆らえず、このような差別は解消されていくはずです。
そのスピードは思いのほか速いのではないでしょうか。
セクハラやパワハラへの認識がここ数年で急速に変わったように、世の中の人にそれが差別問題であると認識されればものすごいスピードで解消されると思います。
セクハラやパワハラは人権問題です。
人の権利を侵害するから大きな問題となっています。
例えば、今はまだ正規雇用:非正規雇用は支払われる賃金の差としてしか議論されていません。
これが「雇用形態に差を付けることによって差別的な身分の問題を起こしている会社」というレッテル(実際は非合理的な理由で支払われる賃金が違うならレッテルではないのですが)を張られるということになったときに国際的なビジネスをしている企業なら大きな問題となってくるでしょう。
同一労働同一賃金が実現すれば人材も流動的となり働き方も多様化していきます。
そうなったときに必要なのはどこの会社に所属しているかではなく、個人として何ができるかが問われることになります。
どれだけ「ギブ」できるもの(普遍的な技術やアイデア)を持っているかが問われます。
私は建設会社で技術系の仕事をしています。
40歳過ぎともなると仕事の半分は工学的知識をベースとしたものですが、もう半分は客先との契約に基づかない業務のやりとりや、社内でしか通用しない政治的な根回しになっています。
よその組織では通用しないタコ壺化したものに、業務時間の半分を割いていることになります。
どこの組織でも通用する「ギブ」できる能力がどれくらいになるのかというのはとても怖い話です。
この本を読んで、自分の能力で会社の肩書きがなくなっても通用するものはどれか?ということを強く意識するようになりました。
・「働き方5.0」 落合陽一著
一方、落合氏は、
働き方1.0 狩猟社会
働き方2.0 農耕社会
働き方3.0 工業社会 【←いまの日本はここから】
働き方4.0 情報社会 【←ここへ移行途中】
働き方5.0 AIやロボットが幅広い分野で進化し、人間とともに働いていく時代
と定義しています。
今は「働き方3.0=工業社会」を脱出して「働き方4.0=情報社会」への移行途中であるとしています。
そのうえで、働き方4.0から働き方5.0を目指す世界では人間とコンピュータがどのように関わっていくのか?ということについて述べています。
人間とコンピュータは競い合うものではなく、お互いに補完しあって、古い人類を超える存在を目指していく。
しかし、コンピュータは「何かをしたい」というモチベーションを持つことができません。
「何かをしたい」という欲求を持つことは人間にしかできないのです。
クリエイティブクラスとは「好きなことをして生きる」のではなく、適切な課題設定を社会に創造し、それを解決していく人たちのこと。
「この課題をこういう風に解決したい」
「これがあればもっと世の中が楽しくなる」
そういった発想ができない人はAIのインターフェイスとして働く(AIに言われた通りに仕事をする)か、AIを導入するほどコストがかけられない仕事をするしかない。
平均的な経験しか持たない人間は「ウィキペディアの劣化版」としか評価されない時代がやってきます。
なんか夢も希望もない恐ろしいディストピアな未来を想像しています。
著者は現在の教育システムは子供たちに見当違いな工業社会的な教育を与えているとして相当な危機感を持っています。
面白かったのはAIが登場し、社会維持コストが安くなる効率的なシステムが出来上がれば、ブルーカラーの取り分が増え、中間搾取するホワイトカラーが駆逐されるということです。
これを共産主義に応用すると不正や搾取をする党の役員をなくし、党員監視のためのコストがかからないので共産主義が成功するのではないかという主張です。
世の中がどんどん「リベラル」になっているので自由を放棄して共産主義になるとは思いません。
しかし、「人の命」の価値が上がっているので、安全のためなら個人の権利・主権は制限されてもかまわないという人が出てきてもおかしくありません。
高福祉だけど自由に制限がある民主主義社会が多くの人から求められる時代となるかもしれません。
あれ?
これの(国家による)自由の制限を(同調圧力による)自由の制限に入れ替えると日本じゃね?
二冊とも今すぐにこれをやると働きやすくなる!といった即効性のあるものではありません。
今後、かなりの確率で「定年」という概念はなくなると思います。
そうなったときに人間は60年仕事をしていかなくてはいけません。
嫌いなものを60年続けることは苦役でしかありません。
必然と「好きなこと(得意なこと)を仕事にする」しかなくなります。
どうやって好きなもの見つけて伸ばしていくか。
マネタイズするか。
好きなことであれば
「この課題をこういう風に解決したい」
「これがあればもっと世の中が楽しくなる」
というアイデアを考えるのも苦になりません。
逆に言うと好きなこと(得意なこと)が無い人はクリエイティブなことができ無いという世界でもあります。(結構残酷ですね)
今の子供たちがどのような社会で仕事をしていくのか。
どのように生きていくのか。
そのことを考えるヒントになる本でした。
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今週のお題「読書感想文」