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【書評】アフターデジタル 社会がデジタル化するとスタバが苦戦する!?


お題「我が家の本棚」

お題「#おうち時間

アフターデジタル オフラインのない時代に生き残る
藤井保文、尾原和啓共著

 

おすすめ度★★★★☆

定番になれる度★☆☆☆☆

賞味期限:1年~2年

こんな人におすすめ:

リモートワークで十分デジタル化したでしょ。って思ってる人

自分の子供がどういう世界で生きていくか知りたい人。

 


新型コロナウィルスの影響で一気にテレワークが普及してきました。
進んでやる人もいれば、無理やりテレワークに移行させられたと言う人もいると思います。
テレワークで仕事をしてるフリをしている人も(≧▽≦)

一部の学校ではリモート授業が始まったり、子供が塾に行けないのでオンライン学習できるスマイルゼミやスタディサプリを始めた家庭もあると思います。
(我が家はスタディサプリ派)

なんとなくデジタル化が一気に進んだような気がします。

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本書を手に取ったときは「まぁ、大仰なタイトル付けてるけど、デジタルがこれ以上同浸透してどう便利になるわけ?アバターの世界になるの?」というのが正直な感想でした。
外国のキャッシュレス凄いとか、信用スコアの話以上に何を教えてくれるの?と。

ごめんなさい。ちょっとうがった見方しすぎてました。読み進めるうちに世界では価値観の転換が起こっていることが分かり、社会がデジタル化されるということが、これほど人間の行動様式を変えるのか!と久々に純粋な気持ちで驚きました。

 

全部オンラインの世界なんて未来だと思ってたら(隣の国では)今来てた(=゚ω゚)ノ

 

筆頭著者の藤井保文氏は株式会社ビービットという会社で東アジア営業責任者を務めています。ビービットという会社を調べてみると様々な企業のデジタルUX(UX:User
experience:サイト上のデジタルコンテンツをユーザーがどのように体験しているか)を改善するコンサルタント業です。ユーザーがサイト上でどのように行動しているのか観察調査を行って企業に改善提案を行う業務を得意としています。現在はその上海支社に勤務し、現地の日系法人にコンサルティングを行っています。
著者達は現在の日本の現状をビフォーデジタル(デジタル化される前という意味)であると定義してアフターデジタル(全てがデジタル化され、常にオンライン状態にある世界)がどのような世界であるかについて語ります。

 

ビフォーデジタルからアフターデジタルまでの距離はどのくらいか?
アフターデジタルの世界では人間の行動はどう変わるのか?
日本がこの状態になった時にどうなるのか?
コーヒー界の巨人、スターバックス苦戦の理由。
無人コンビニ、その先にあるのは?
中国での先行事例を参考にその先行事例の紹介と、どう変革していくべきかを例示した本です。
特に私のようにデジタルやITが専門ではない人にはかなり驚きの内容となっています。
デジタル化の最先端では何が起こっているのかを知識として得られる良書となっています。

読後の感想は3つでした。

感想1.便利さがひとの行動様式を変える
感想2.マイナンバーが普及しないわけ
感想3.トランプ氏の対中国の悪手ぶり


本の内容紹介
本書の構成は以下の4部構成になっています。
第1章 知らずには生き残れない、デジタル化する世界
第2章 アフターデジタル時代のOMO型ビジネス~必要な視点転換~
第3章 アフターデジタル事例による思考訓練
第4章 アフターデジタルを見据えた日本式ビジネスの変革


感想1.便利さがひとの行動様式を変える

オンライン決済することにより誰がどこで何を買ったのかがわかり、電車やタクシー、シェアリング自転車を利用すればいつどこへ誰といったのかがわかります。

 

アリババの提供するアリペイという電子決済サービスがあります。これはデパートや高級ブランド店、個人商店、屋台、タクシー、映画館、電気ガス水道電話等の公共料金、さらには税金まですべてをアプリから支払えます。そしてその支払いデータを収集します。
そのアリペイのサービスの一つにジーマクレジット(芝麻信用)というものがあります。アリペイの利用履歴を中心に提携サービスの利用状況やアリペイ上の友人関係も含めて膨大なデータを集めデータ分析を行いユーザーの「信用スコア」を算出しています。(350~950点)基本的に個人の支払い能力を可視化したものなのですが、出身大学や職業を登録することで点数を上げることができます。この点数を上げることによりアリババグループが提供する様々なサービスの恩恵が得られます。(賃貸の敷金減額、ホテル・レンタカーのサービス、レンタルWi-Fiのデポジット不要、傘や充電器の無料レンタルなど)

 

利用者数が5億人を超えて、現在では婚活で相手を探す際にジーマクレジット何点以上と指定したり、オークション・フリマアプリなどでは「700点以上の人から買う」や「600点以下の人には売らない」という人も珍しくないそうです。そして企業はアリババに利用料を払うことでこのデータをもとに就職面接、賃貸物件の審査、事業資金の貸し付け審査を行います。当然スコアの高い人は金利が低かったり、敷金が安かったりメリットがあります。進んでジーマクレジットに個人情報を提供することで点数を上げようとするバイアスがかかります。

 

中国人のユーザーは個人情報を吸い取られるという危機感はないようで、ゲーム感覚で点数アップさせて信用度の証明としてSNSで自分のスコアを開示する人もいるようです。支払いが滞りなく行い、借りたものはきちんと返せば点数が上がり、進んで個人情報を開示すれば点数が上がる。今、5億人の中国人が性悪説から、この「善行を積むと評価してもらえる」という価値観に変わりつつあるのです。(著者はジーマクレジットが普及してから上海の中国人のマナーが格段に良くなったと述べています)

そしてサービスを提供する側も利用する側もメリットを享受できるシステムが普及することにより、人々の意識が「それは買い手と売り手にとってどんなメリットがあるの?」と常に問われる世界になっているのです。

 

感想2.マイナンバーが普及しないわけ
すべての行動様式がデジタル化され、データとして参照されるようになると徹底的に経済的合理性を追求する世界がやってきます。管理する人にとっては便利だけど、使う人にメリットがないような非対称性があるシステムは世の中に受け入れられません。


日本のマイナンバー制度(総務省)は典型的な悪例になるでしょう。現在、国土交通省も建設キャリアアップシステムという建設労働者一人一人に個人情報と就労履歴を紐付けるカードの発行を行っています。これらが普及しない一番大きな要因は使う人にメリットがないということです。(そのうえ信じられないくらい手続きがめんどくさい)

 

制度を導入する側には管理しやすいというメリットがあるけど、使う側には特にメリットがない。むしろめんどくさい。そんなシステムの普及を呼び掛けても浸透するはずがありません。解決する方法はただ一点。使う人が便利になるシステムにすれば自然と普及します。それができれば苦労しないと言いたくなるでしょうが、それができないのであれば普及しないし、別に誰にとっても必要ありません。

 

 

感想3.トランプ氏の対中国の悪手ぶりとapple card


新型コロナウィルス対策でもスマートフォンの位置情報から人の行動様式の分析に使用しています。日本ではNTTドコモから提供されたデータを使用することが多いですが、世界的にはiosやandroid osから得られたGPSデータを使用することがほとんどです。

 

中国ではアリババ、テンセントという会社がGAFAのような地位を占めています。この二社が情報(個人情報、購買情報、移動情報ほか)をほぼ独占しています。トランプ氏の中国企業:ファーウェイへのandroid osを供給停止する政策はファーウェイ弱体化を狙ったものでした。実際ファーウェイはスマートフォン分野では販売台数前年比-20%と困ったことになっています。しかし、それよりも世界で二番目にスマートフォンを売り上げている(昨年約5800万台)ファーウェイにandroid osが搭載されない。そこから得られる情報がなくなってしまったことのほうがGoogleにとっても、アメリカにとっても痛いはずです。


そして今になってなぜappleがクレジットカードを作るのか?その答えがここにありました。アップルはiosから得られる個人情報、移動情報に加えて、購買情報が欲しかったのです。主にapple payで電子上の決済、apple cardでリアル店舗での決済情報を得ることができます。(もちろんapple payもapple cardも電子決済、リアル店舗どちらでも使えますが)

 

まとめ
本書はデジタル化された世界がどのように人の行動様式を変えるか、価値観の転換が起こるかを説明しています。
ヨーロッパでは個人が自分の個人データをコントロールする権利があると考えられています。(GDPR)しかし中国では匿名化された情報は公共財であるという考え方です。これは積極的に国家が情報を活用してよりよい社会づくりに役立てることが推奨されます。(例えば移動データから渋滞対策を行ったり、ブレーキのかけ方から道の補修を行ったりする)日本人の価値観はこの権利主義と功利主義の間くらいの人が多いような気がします。

このデジタル化する潮流から逃れることはできないでしょう。来るべき時代にどう備えるか。先行事例を知ることで日本がどのように変わっていくか予測の一助になるはずです。

 

 

おまけ

スタバの足元を揺るがすマイクロビジネスの乱立

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中国のスタバが苦戦しているようです。その原因がマイクロビジネスと呼ばれる小規模店の乱立です。
デジタル化が進み、小規模電子決済、フードデリバリーが発達し、スマートフォンのアプリを数回タップするだけで仕事場にできたてのコーヒーが届くようになっています。席にいながらコーヒーが届くのを待つだけでよければ、一服しにコーヒーを買いに行こうとはなかなか思わないでしょう。

 

こうなるとコーヒーを売るという商売は店舗から冷めない時間で配達できる距離が重要になります。イートインできるスペースはむしろ回転を悪くする要因なのです。いかにオペレーションを回すか「注文が来てからいかに早く商品を出せるか」が勝負になります。

 

そうなると大通りの路面店を構えるスタバにはとても太刀打ちできません。店舗コストは膨大で、配達に行くのも大通りからでは渋滞や一方通行で時間がかります。ホットは冷めてしまうし、フラペチーノは溶けてしまいます。

 

デジタル化により会計も配達も外注できるのです。現金の受け渡しも売り上げの集計もやる必要はありません。コーヒーショップの店員はただひたすらに取りに来た人に、淹れたてのコーヒーを渡すだけでよいのです。

 

これは個人では大きなチャンスです。小規模な資本でも起業でき、煩わしい会計処理も配達員の確保も心配しなくてもよいのです。ただひたすらに得意なことをできる能力があれば商売ができます。デジタルによって商売の簡易化が行われているのです。

 

 

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